腹腔癒着モデルを用いた癒着防止材の評価試験(※腸管擦過、子宮擦過、肝切除、腹壁切除、焼灼など)
外科手術を受けた際に、侵襲を受けた臓器と周辺組織が接触する事で組織同士が癒着してしまう事があります。例えば消化器官の手術後に発生する臓器癒着は腸閉塞や腹痛を伴うこともあり、手術後のQOL低下を招きます。このような癒着の発生を防止する為に癒着防止材と呼ばれる医療機器が製品化されています。癒着防止材の多くはフィルム形状で患部へ貼り付ける製品ですが、腹腔鏡手術に適したスプレータイプの製品も存在します。形状は異なりますが全ての癒着防止材に共通しているのは生体吸収性材料で構成されている点で、適用部位の治癒が完了した後は速やかに消失する必要があります。このような治癒過程を考慮すると、非臨床試験で癒着防止材の有効性を評価するにはin vitroではなく、外科処置による癒着の発生、評価物質の消失を評価できるモデル動物が必要不可欠です。日精バイリス株式会社では腸管や肝臓を中心に様々な癒着モデルを構築し、これまでに100試験以上の有効性評価試験を実施しています。
ラットを用いた腸管癒着モデルの評価例
癒着防止材の臨床試験では人工肛門を埋設した患者様を治験者とし有効性が検証されます。腸管に傷害を与えるこれらのモデルは臨床試験の対象臓器と同様であることもあり広く実施されています。様々なモデル作製方法が報告されていますが、日精バイリス株式会社では盲腸を擦過するモデルと盲腸擦過に加えて腹壁の一部を欠損させるモデルの2つのモデルで有効性評価を実施しています。どちらのモデルも麻酔下で開腹し、不織布を用いて盲腸を擦過する処置までは同様ですが、盲腸擦過+腹壁欠損癒着モデルは盲腸接触する腹壁に約1cm径の欠損を設ける点が異なります。評価物質を傷害部位へ埋植した後に術部を縫合し動物を覚醒させます。癒着防止性能の評価は一定期間後に剖検を行い、その際に癒着の程度をスコアリング、また癒着の発生率を集計し評価を行います。
ラットを用いた子宮癒着の評価例
有効性を評価する臨床試験が腸管を対象としたものであるのに対し、帝王切開時など産婦人科領域で安全性を検証するパイロット試験が実施されるケースは少なくありません。産婦人科領域での有効性を想定した評価モデルとして、日精バイリス株式会社ではラットの子宮を擦過し癒着を発生させる有効性評価を実施しています。麻酔下で開腹し、露出した片側子宮を研磨機器を用いて擦過する事で癒着を発生させます。癒着防止性能の評価は腸管癒着モデルと同様に癒着の程度をスコアリングと癒着発生率になりますが、動物の生理周期が影響する事もあり、試験結果のバラツキがやや大きい評価系になります。
ラットを用いた肝臓癒着の評価例
前述の腸管と子宮の癒着モデルは擦過中心の傷害であるのに対し、肝臓を用いた癒着モデルは部分切除した離断面への癒着を評価する評価系になります。肝臓は血液が多く、切除時に出血を伴う為、電気メスによる止血作業が必須となります。スコアリングによる癒着程度の評価に加え、癒着の長さを評価できる点が特徴です。
ウサギを用いた腸管癒着モデルの評価例
ラットの盲腸擦過+腹壁欠損癒着モデルと殆ど同様の操作になりますがウサギはラットに比べて対象臓器が大きく、与える傷害がより広範囲であるため、強力な癒着を呈します。画像解析装置を用いて腹壁欠損部位への癒着の面積を定量的に評価する事も可能です。スクリーニング試験をラットモデルで行い、当該モデルでの試験結果を申請用資料に用いるケースも少なくありません。